midunolog

日記を書きたい

ナツノカナタ、EDまで

Steam で無料で公開中の、テキストアドベンチャーゲーム「ナツノカナタ」をプレイして、エンディングまで見た。 本編の内容に触れて感想を残すので、以下サイトをみて興味をもったり、Steam のプレイ環境があるひとは、先に自分でプレイしてみてほしい。

natsuno-kanata.online


(改行を長めに入れておくので、感想見たい場合はスクロールしてください)
























昨今のインディーズゲームは数あれど、無料で公開してくれているのは珍しいと思う。公式サイトを見ても、プレイ時間は 6~10 時間とされていて、テキストアドベンチャーゲームとしては十分長いと思う。
実際ぼくはエンディングまでに10時間かかった。

システム面は決して使いやすいとはいえないものの、使いにくい・不便で不満だという点は見当たらない、必要十分なつくりになっている。あっでも強いて言うなら、テキスト入力欄に入力された文字列をマウスドラッグで選択すると、クリック扱いになって本文が進んでしまう挙動は気になったな。。まぁでもほとんど問題なく遊べるし、遊んでいる最中に気にならない仕上がりで良かった。

あとは、BGMが特に良かった。夏の爽やかなイメージとして、アコギ調のギターやピアノが使われていたり、ともすればアンビエントなカテゴライズの難しい謎のBGMまであったりと多彩で魅力的な音楽が印象的だった。ただ、ストーリーの展開上、後半は重めのBGMがずっと流れてて、それをずっと聞くことになるのはしんどかったかもしれない。

さて、肝心のシナリオについて、エンディングまで進めるだけだと、消化不良感があるなと思った。結局すべて偶然だとするなら、終わらせるのではなく続けることにしてみよう。続けることに決めたから、そうしよう以上の話でしかなくて、ただ決めるまでに紆余曲折あった話なのかなぁという感じ。驚きの事実とか、論理的な理由みたいなのが無かったのは全然いいと思ってるし腑に落ちているので、特に問題視していない(が、まぁ正直無料ゲームだから納得している側面も大いにある)

ただ、その意思決定に至るまでに3章くらいかけていたと記憶していて、その3章の間、とくにメインストーリーが進んでいるように思えない、なんか悩んでて不幸なことが起きてとくに改善されないし解決策もみつからなくて不安を吐露するだけの展開が続いたのがつらかった。
AUTO にしてたので、なんかずっとキャラが「…」って言ってて、話が進まないなー、BGMはずっと重めの曲が流れていて、でも特にプレイヤーとしてできることもないし、ただ目の前の文章が進むのを待つしかないのが結構つらかった。
いまはまだエンディングまでしかやっていないので、あの夢空間や、アカネさんの感染がどう伏線として展開されていくのかわからないけれど、エンディングだけを見るなら、あの間のイベントは必要だったのか?という気になってしまった。

とまぁ散々書いたけれど、シナリオの展開でもちろん面白いところもあった。というか面白いところのほうが多かったので、それについても触れておきたい。

まず、プレイヤーが視点移入している主人公サイドの世界観が、いわゆるプレイヤーサイドのリアルな世界観とは異なることに驚いた。
背景にほとんど実写?のような画像がつかわれていたので、なんとなく勝手に、あぁ現代社会のどこかアパートの一室でパソコン見てる設定なんだなと思っていたけど、読み進めるうちに、むしろプレイヤーサイドの世界観は、ナツノサイドの世界に近く、主人公サイドの世界観こそが異質であるという叙述トリック的な展開に驚いた。中盤で露呈するこの展開が一番の肝な気がする。ファンタジーやフィクションだと思っていた世界のほうが、現実のプレイヤーの世界に近くて、自分の主観で読み進めている語り手の主人公サイド世界のほうが異質であるという設定が良かった。

あとはやっぱりエンディング後のCパートに、物語冒頭の探索パートをやらされて、そこであっこんなこと最初にあったなーって思い出したり、ナツノさんにまた起動して会いに来てね的なことを言われたのがめちゃくちゃによかったな…。もうそれだけで、これまでの展開うんぬんがどうでもよくなるくらいに良かった。

この作品は、プレイヤーから見たメタ情報の使い方がすごく上手で、メタっぽく見せて全然違うことをあとから開示したり、メタっぽいアプローチをうまく世界観に盛り込んで、キャラクターに言わせたりプレイヤーに操作させたりしていて、そこが本当にすごいしこのゲームの面白いところだと感じる。

総じて無料ゲームから想像できる品質やボリュームのそれからはかけ離れた意欲作だと思う。いやこれ絶対に意欲ドリブンで作られてるでしょ。アーリーアクセス出したり、フルボリューム版のリリースである8月からごく最近までこまめにバグ修正や追加コンテンツをリリースしたりしていて、意欲がすごい。買い切りゲームですらないのに、継続的にアップデートされてるの、そうそう無いと思う。

以前からストアでサムネイルだけは見かけていたけど、商品ページはひらいたことなくて、どうせポチポチ進めるだけのストーリーゲームでしょと思っていたが、ぜんぜんそうではなかった。

エンディングまでプレイしたけど、まだエンディング後の要素があるらしくて本当にすごいボリューム、作り込みだなと思う。起動画面の変化もちゃんとあって良い。なんならまだ実装されていないキャラストーリーもあるみたいで、まだまだシナリオを読めるのが楽しみだ。

プレイ後、Steam のアップデートログを眺めていたら、ログボがあるらしいことに気づいたときは笑ってしまった。そういうところも設定に絡めてくるのが本当に上手い。
とりあえず今はアップデートを待ちつつ、折に触れてコンピューターを起動して、あの娘に会いにいくのも悪くないなという気持ちになっている